寄せ書き日の丸旗

コロナ禍で家に居る時間が長くなり、家の中の片付けをする人が増えたというのはよく聞く話です。このことは、太平洋戦争で戦ったアメリカでも同じだそうです。

実は、そのせいで「寄せ書き日の丸旗」が日本に帰国しているというのです。ネット記事で読みました。

北九州平和資料館にも寄せ書き日の丸旗が2枚展示してあります。

以前、資料館によくいらっしゃるご尊老(遺族会のお世話をしている)が、「『見つかった遺品』を遺族に返す」話をしてくださいました。その時に初めて、資料館に展示されている寄せ書き日の丸旗が、アメリカの方から返されたものだということを知りました。


「戦利品として、持ち帰るんよ。」
ご尊老の言葉に、私は驚きました。
「生き残った兵隊が持ち帰った物じゃないのか。」ーーー

いろいろなことを知っていると、同じ物でも全く見え方はちがってきます。

ご尊老の話を聞いてからというもの、「寄せ書き日の丸旗」から浮かぶ「人の思い」が増えました。
●日の丸旗の持ち主(戦場でどんな経験をしたのだろう?無事だったのかなぁ。)
●寄せ書きを書いた人たち(友達かな。親戚かな。どんな思いで送り出したのかな。その頃の様子は…と、その時代の情景が蘇ります)
●寄せ書きに名前はないようだけど、持ち主のお母さん(自分の子どもを戦争に参加させる気持ちって…国のために働くわが子を、誇りに思えるのかな)
遺品の持ち主を探している人たち(知らない土地で亡くなった人の無念を慰めようという思い、戦争を忘れてはいけないという思いから活動しているのかな)・・・

たくさんの人たちの思いが私に押し寄せて来るようになりました。


そして今日。また違う人の思いを知りました。
それは、戦った相手の思いです。

彼らは日本兵を恐れ、そして尊敬していたのです 。」

「尊敬?!」

日本兵は、死を覚悟して、米軍艦に体当たりしていった。米兵からしてみると、その姿が恐怖だったというのです。(その肉弾戦により、戦争神経症になり、戦線を離脱したアメリカ兵が多く居たといいます。)

「元米兵たちが、どれほど日本に対する畏怖の念を抱いていたことか。旗の返還事業を通して分かるのはそのことです。」


私の中には、「寄せ書き日の丸旗」から浮かぶ人の思いが一つ増えました。
日本兵と戦ったアメリカ兵たち(日本兵を尊敬していたのか。)


しかし、なんだかモヤモヤします。

確かに、国を守るため、大切な人を守るためと、死をも厭わずに体当たりする姿に、「すごい」「勇気がある」という気持ちが湧いてこないでもありません。
でも、よく考えると、体当たりすることで敵艦が沈没すれば、殺人です。
「勇気ある」日本兵を大切に思っていた人達は、彼の死を本当に喜んでいるのでしょうか?
残された人々は、どのような人生を送ったのでしょうか?
そして、亡くなった人たちは、「戦うことが問題解決の方法」という人類の愚かな考え方に翻弄されなければ、どんなにか豊かな人生を送ったことでしょう・・・

平和になった今だから言えることなのでしょう。でも、過去の過ちの上に築かれた平和な今だから、事実の意味を冷静に考えることが大事だと思います。(そのためには、歴史的背景や多くの人の体験などを知ることが必要だと考えます。)


私が「寄せ書き日の丸旗」を見る時に思い出すようにしているもう一つの人の思い。
●日本に侵略された国の人たち(この旗を見ることで、戦争中のおぞましい光景を思い出してしまう人がいるんだろうな。)

命令とはいえ、あるいは時代の考え方とはいえ、人権を無視した行いをした日本人がたくさんいたことを忘れてはいけないと思っています。
80年近くたった今でも、日本人の行ったことに憎悪の念を抱いている人がいることを忘れてはいけないと思っています。---自分は、過去の過ちを忘れず、人間としての誇りをもって生きる!



コロナ禍で故郷に帰国できた「寄せ書き日の丸旗」。
私に、多くの人の思いを想像させてくれる大切な遺品です。

そして、

平和を築くために大切なことを確かめさせてくれます。

考えるべきは、日本人のことだけでなく、すべての国の人々のこと。

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