『月光の夏』
ピアノが哭いている、日本中が泣いている。
どうしてももう一度ピアノが弾きたい
名曲「月光」を弾きこなした後、大空に飛び立っていった特攻隊員。そのピアノは今も残っていた…。
初夏のある日、ふたりの特攻隊員が訪れた。‟明日にせまった出撃を前に、ピアノを弾きたい”と、駆けてきたという。ともに学徒出身の音楽を愛する若者だった。音楽学校出身の隊員(永野典勝)は、ベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」を弾いた。
もうひとりの師範学校出身の隊員(田中実)は子ども達の歌う「海ゆかば」を伴奏した。そして満足そうに基地へ帰っていった。それから2カ月、戦争は終わったが、ふたりは帰ってこなかった…。