聖戦美術・海軍美術画集
1937年7月7日盧溝橋事件で、日本は中国全土へ侵攻を拡大し、日中戦争が全面化した。同年「国民精神総動員実施要項」決定。翌年「国家総動員法」を公布。翼賛体制(天皇の下、軍部の方針を絶対とし、すべての国民を戦争へと駆り立てた体制のこと)が進められる中、芸術さえも戦争に動員された。
盧溝橋事件2周年記念に、小磯良平、藤田嗣治、川端竜子、宮本三郎など画家たちで組織された陸軍美術協会が、「聖戦美術展覧会」を開いている。それは、「前線の将士活躍ぶりを銃後に示し」「感謝感激の渦を巻き起こした」(『聖戦美術』序文)そうだ。
展示は、陸軍美術協会の『聖戦美術』(題字:陸軍大将 松井石根 書)と大日本海軍美術協会『大東亜戦争海軍美術』(題字:海軍大将 米内光政 書)。小磯良平、藤田嗣治、向井潤吉をはじめ、従軍した多くの著名な画家たちが絵筆をとっている。
『聖戦美術』のトップにある小磯良平の「南京中華門の戦闘」に描かれた銃を抱えうずくまる兵士、タバコをくわえる兵士の眼に勇ましさは感じないが、戦闘の激しさは伝わってくる。南京陥落の報に浮かれ、ちょうちん行列で祝った銃後の国民の眼にどのように映っただろうか。