戦争を生きた人の思い

只今、休館させていただいて、前資料館からとりあえず運んだ様々な物の整理、収納、また、新しく寄贈して頂いた物を展示する準備をしています。

昨日9月4日は、お三方に、ご親族の遺品を持参、ご来館いただきました。

オープンしてからの2か月間だけで、8人の方から寄贈を賜っています。

その中で今回は「人形」を紹介します。

五十数体の人形は、戦前から戦後(現上皇の結婚まで)の二十数年間のくらしの様子を表しているものです。

この人形を制作した方は、90歳の方(Kさん)です。
「孫が小学生の時に、電話をかけてきて、『おばあちゃん、昔のくらしのことを教えて。』と言うんですね。話して聞かせても、ちっとも伝わらない。『よし!人形を作って教えよう!!』と、作ったんですよ。」
と楽しそうに話してくださいました。

Kさんは、八幡大空襲を経験されています。

当時、枝光から八幡高等女学校に通っていたKさんは、被災した街を歩いて学校に通ったそうです。途中、亡くなっている方を見ることもあったそうです。

「怖いとか何も思いませんでしたよ。」

Kさんは、静かにおっしゃいました。

今振り返れば、Kさんとは、何度かお話をしているのですが、空襲に遭った話は、初めてお電話いただいた時だけだったように思います。
その後は、人形そのもののお話や戦後どのように生きてきたかというお話でした。

人形のお話をするKさんは、本当に生き生きとしています。

戦争当時Kさんが身につけていた名札

子どもの頃から絵を描いたり物を作ったりすることがお好きで、特に、洋服には大変興味があり、
「私は、はっきりと覚えているんですよ。」
と、ご自分でも自信をもっておられる様子でした。

実は、寄贈の相談のお電話をいただいた時、私は、一体の人形を想像していたんです。

「寄贈する場所を探して、いくつか資料館を訪ねたんですが、私がイメージする場所が見つからなくて・・・」
とおっしゃられるので、
「一度、お出でください。その上で決めていただけるとうれしいです。」
と伝えました。

娘さんと一緒に、TICO PLACEに来られた時に、人形の写真を持って来てくださったんですが、あの時の感動を今も忘れられません。
戦争中の遺品ではないのですが、自然と涙が溢れてきました。

「人間」を感じたんだと思います。

人形を通して、お孫さんとのやり取り、空襲に遭った話、戦後の生活、Kさんの思い、・・・それまでKさんから聴いていた様々な話が沸き上がってきました。
そして
Kさんが、一針一針縫っている姿、昔のことを思い出しながら、どう表現しようかと考える姿、お孫さんにお話している姿、・・・どんどん私の中で想像が広がっていきました。

私は、人形を通して、私が思う「人間のすばらしさ」を感じたんです。

おそらく、一つ一つの人形に、Kさんの体験がぎゅっと詰まっているのだと思います。
話 をしてくださるKさんから、溢れる思いを強く感じました。


いいことを思い付きました!

「お話をもっとたくさん聴いて、記録しよう!」
「せっかくだから、『本』にしよう!!」
見開きに、人形の写真と、その写真にまつわるKさんの思い出話が載っているという本を作ろうと思います。

ワクワクしてきました。
戦争を生き抜いたKさんの思いを知り、残すことができればと思います。

いっしょにお話を聴きたい方、本作りに参加したい方、どうぞお気軽にお声かけ下さい!

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